自己破産の予納金とは何か

自己破産の予納金とは何か

自己破産の予納金について解説します。予納金とは、自己破産にあたって裁判所に事前に納める手続き費用のことです。基本的には自己破産申立後1週間~1か月後請求がありますが、納付期限については裁判所によっても対応が分かれています。裁判所によっては、分割払いに応じてくれるケースもあります。

予納金とは何か?

自己破産の際に必要になる予納金とは、裁判所の手続きにかかる費用です。申立人が支払った予納金は、自己破産を進める際の様々な手続きをするために使われ、仮に手続き後に予納金が余りそうな場合でも、債権者に分配されるため、基本的には返ってきません。

自己破産の予納金の金額は、自己破産の手続きの種類によって異なります。

「予納金」というと、あらかじめ裁判所に納めておいて、使わなかったら返してもらえるかのような印象を受けますが、現実には申立人の手元には戻らないお金なので、単に「裁判所の手続き費用」と理解してください。

予納金は裁判所に納める費用なので、弁護士に自己破産手続を依頼した場合は、別途弁護士費用が掛かります。

自己破産時の予納金はどれくらい?

自己破産の予納金は手続きの種類によって異なり、最も安い「同時廃止」の場合は約2万円程度、「少額管財事件」の場合は約22万円程度(管財費用込み)、最も高額な「管財事件」の場合は最低でも50万円以上(管財費用込み)かかります。

自己破産の手続きには3種類あり、基本的に申立時にいずれかの手続きを選択しますが、最終的な決定は裁判所が行います。同時廃止事件として申立てをしても、財産調査や免責調査のため、裁判所が管財事件として進める場合もあります。

(1) 同時廃止…2万円程度

申立人に処分すべき一定額以上の財産がなく、事案が比較的単純で、裁判所が問題にするような事由(免責不許可事由)に当てはまる場合ではない場合には、同時廃止となります。簡易でスピーディな手続きであり、同時廃止になれば予納金は2万円程度と格段に安くなります。

(2) 少額管財…22万円程度

申立人に不動産などの財産があったり、ギャンブルや浪費が原因の借金であったりするなど、裁判所が詳しく調査する必要がある場合には、基本的にこの手続きになります。
少額管財は、比較的安価で手続きが行えるように用意された手続きで、予納金は22万円程度です。少額管財手続になるためには、申立人が事前に弁護士に依頼している必要があります。また、少額管財手続は全国の裁判所で採用されているわけではないため、裁判所によって異なります。

(3) 管財事件…50万円以上

大企業の破産のほか、中小企業や個人でも、弁護士を事前に選任していない人は管財事件となります。管財事件は最低でも50万円以上の予納金が必要となります。

※弁護士に依頼した場合は、別途弁護士費用が掛かります。

自己破産に必要な費用の内訳

自己破産に必要な費用の内訳は、基本的に(1)破産申立手数料、(2)官報広告費、(3)郵便切手代、(4)引継予納金の4つです。このうち、(4)の引継予納金が最も高額ですが、同時廃止になった場合は(4)は必要ありません。(1)~(3)は全ての手続きに共通して必要になります。

(1)破産申立手数料…1,500円

裁判所に自己破産を申し立てる際の手数料は1,500円となっています。収入印紙を購入して、裁判所に提出する書類に貼付する形で納付しなければなりません。

収入印紙は、郵便局や法務局で購入できます。コンビニでも販売していますが、基本的に額面が200円のものしか置いていないので、裁判所費用のように高額な収入印紙が必要な場合は郵便局や法務局での購入がおすすめです。

購入の際は、収入印紙を購入したい旨と金額を伝えます。ここで一つ注意が必要なのは、基本的に現金でしか購入できないことです。交通系ICカードやクレジットカードなどは使えません。

(2)官報公告費…1万~1万5,000円程度

自己破産手続をとると、破産した人の名前や住所などの個人情報が官報に掲載されます。

官報とは、国が発行する機関誌で、法令の公布のほか、国の政策の周知、国民の権利義務に関する各種の広告を掲載しています。叙勲や褒章を授かった方の情報が載ることもあります。他方、自己破産や個人再生の個人情報も公告事項として記載され、これを拒むことは出来ません。また、掲載費用は自分で支払わなくてはなりません。自己破産の官報広告費は、事件の内容にもよりますが、1万~1万9000円程度です。

(3)郵券代…5,000円程度

自己破産手続きにおいて、裁判所が破産者に対して書類を郵送する際にかかる切手代のことです。この郵便切手代も、破産者が事前に納付する必要があります。

「予納金は支払ったら破産者の元には戻ってこない」と書きましたが、この郵券代だけは、手続きに使用しなかった分が返還される場合もあります。

(4)引継予納金…20万~50万円以上

手続きの種類が少額管財または管財事件になった場合に発生する費用で、破産管財人への報酬にあてられます。

少額管財又は管財事件の場合は、破産管財人が選任され、財産の管理や処分、免責不許可事由の調査などにあたりますが、この破産管財人への報酬にまとまった費用が掛かるため、予納金のうち最も高額になります。

同時廃止の場合は破産管財人が選任されないため、引継予納金が必要なくなり、費用が安くなります。

予納金はいつごろ支払うの?

自己破産手続きで予納金を支払うタイミングは、おおむね申立てから1週間~1か月程度で請求があります(裁判所によって異なります)。納付期限については、裁判所によって期限がある場合とない場合があり、対応が分かれています。
裁判所によっては分割払いに対応しているところもあります。

予納金が支払えない場合はどうなるか

予納金が支払えない場合、自己破産の手続きを進めることが出来なくなります。ただし、(1)弁護士事務所に依頼の上、積み立てを行う、(2)分割払いが可能な裁判所がある、といった方法により、お金がなくても自己破産をすることができます。

予納金の納付期限は裁判所によって異なりますが、予納金が全て納付されない限り手続きが完了することはなく、借金問題の解決もできません。

手続きが同時廃止の場合は、比較的支払いやすい金額ですが、少額管財や管財事件となった場合は、お金の問題で苦しんでいる人には支払いづらい金額です。しかし、予納金を支払うための方法はあります。少額管財・管財事件になりそうな場合であっても、あきらめずに以下の方法を検討してみてください。

(1)弁護士事務所に依頼の上、積み立てを行う

弁護士事務所によっては、自己破産手続を依頼すると、予納金や弁護士費用の積み立てを行ってくれる場合があります。

借金の返済に困っている場合、自己破産の費用を積み立てたくても、月々の返済負担があるために費用を捻出できないケースが多いでしょう。しかし、弁護士事務所に依頼して、各債権者にあてて受任通知を発してもらうことで、借金返済の督促をストップさせ、その間に費用を積み立てることができます。

※ここでは、債権者とは「お金を貸した相手方」、債務者とは「お金を借りた人」のことを指します。

受任通知とは

弁護士が債権者あてに、①自分が依頼者について債務整理を受任したこと、②今後、債務者には弁護士を介して連絡し、直接債務者に連絡することがないように、といった内容を記した書面のことです。債務者との契約後、債権者には郵送やファックス等ですぐに送信され、以降、債権者は弁護士を通すことでしか債務者と連絡を取ることが出来なくなります。

債権者から連絡や督促が来ない期間に、債務者は弁護士に対して、弁護士事務所が指定する口座に毎月一定額を振り込む形で積み立てを行い、そのお金を予納金や弁護士費用に充てることができます。

そして、予納金と弁護士費用に相当する金額が貯まった時点で裁判所に自己破産の申し立てを行います。ただし、積立期間があまり長くなってしまうと、しびれを切らした債権者が訴訟を起こしてくることもありますし、わざと時間をかけてその間に財産を減らしたのではないと裁判所から疑念を抱かれてしまうことも考えられますので、積立期間や毎月の支払額は弁護士と相談して、可能な範囲で早めの積み立てを行います。

(2)分割払いが可能な裁判所がある

予納金の中でも高額になる引継予納金に関して、東京裁判所など一部の裁判所では、分割払いに対応してくれるケースがあります。分割払いが認められた場合でも、予納金を全額支払い終えるまでは自己破産手続は終了しません。

分割払いに対応してくれる裁判所は限られていますが、可能な場合は相談してみることをおすすめします。

(3)法テラスの制度を利用する

法務省所管の公的な法人である法テラス(日本司法支援センター)では、債務整理などの法的手続きを弁護士や司法書士に依頼する場合の費用を立て替えてくれる「民事法律扶助業務」という制度があります。

費用の立て替え制度を利用するためには、以下の条件に当てはまる必要があります。

  1. 月収や保有資産などの資力が一定額以下であること
  2. 自己破産の場合、免責の見込みが一定程度あること
  3. 民事法律扶助の趣旨に適すること

注意が必要なのは、法テラスの制度では、弁護士費用の立て替えが可能であるものの、予納金は立て替えの対象外となることです(生活保護受給者を除く)。
立て替えてもらった弁護士費用は、毎月5,000円~1万円程度の分割払いで返済していきます。