個人再生をするとローンやクレジットカードの契約ができなくなる?

個人再生をするとローンやクレジットカードの契約ができなくなる?

個人再生とローンやクレジットカードの関係について概説します。個人再生をするとローンが組めなくなるほか,全てのクレジットカードの利用や作成,更新が難しくなります。これは,信用情報機関に個人再生の事故情報が記載されるためですが,その登録期間は5~7年です。個人再生中のカード利用や決済に関する注意点,再生後にローンを組むポイントなどをまとめました。

個人再生後クレジットカードの作成やローンを組むのは難しくなるのか?

個人再生をすると,5~7年の期間,クレジットカードの作成や新たなローンを組むことが難しくなります。これは,信用情報機関の記録に個人再生の記録が載るためです。もっとも,登録期間が経過すると情報は消えます。

信用情報機関とは,金融機関や貸金業者等が,個人にお金を融資する際や,クレジットカードの利用や分割払いなどの際に,審査のために利用する機関です。個人のお金の貸し借りの契約や返済状況,クレジットカード契約等の信用情報を記録し,管理しています。

お金を借りたり,クレジットカードを利用したりしたことがある人ならば,誰もがこの信用情報機関に記録が載っています。信用情報は厳格に管理され,加盟している企業であっても,目的外の用事でみだりに閲覧することはできません。

日本の信用情報機関は以下の3社があり,合法的な金融機関や貸金業者は3社のいずれか,もしくは複数に加盟しています。

  • 株式会社日本信用情報機構(JICC)
  • 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
  • 全国銀行個人信用情報センター(KSC)

個人再生をすると,これらの信用情報機関の記録に個人再生をした記録が残るため,情報を参照した金融機関等が「この人にお金を貸しても,返してもらえない可能性がある」と判断し,審査に落ちてしまうのです。
(厳密に,CICには個人再生をした事実が登録されるのではなく,支払条件や支払総額の変更として登録されることになりますが,個人再生をしたことが影響するという意味で,上記表現をしております。)

個人再生をした場合,信用情報機関に事故情報が登録される

お金を貸すのにマイナス材料になる記録を「事故情報」と言い,信用情報機関の記録に,自己は情報が記載されることを,俗に「ブラックリストに載る」と言います。事故情報の例としては,個人再生,任意整理,自己破産などの債務整理ですが,返済を数か月遅延することでも同様にブラックリストに載ります。

ブラックリストに載ると,主に,以下のような取引が難しくなります。

  • 金融機関や貸金業者からの借り入れ(住宅ローンや自動車ローンなど)
  • クレジットカードの利用や更新
  • スマートフォンなどの本体代金の分割払い購入

ただし,クレジットカードのように使えるデビットカードやプリペイドカードによる支払い,スマホの現金での一括購入は可能です。ブラックリストに載ってしまった場合には,そのような方法を利用する必要があります。

ブラックリストに載っても,5~7年経つと情報は消えますので,永久に残るわけではありません。

個人再生とクレジットカードの関係

個人再生をするとクレジットカードが使えなくなります。この際,現在持っているクレジットカードだけではなく,全てのカードの新規作成や利用ができなくなる点には注意しましょう。(もちろん,個人再生をする以上,借入は禁止となります。)
ただし,デビットカードやプリペイドカードは使うことができるため,ブラックリストに載っている期間中はこれらのカードを使うなど,支払い方法を工夫しましょう。

(1)現在使用中のクレジットカードが使えなくなる

まず,現在利用中のクレジットカードは解約対象になります。弁護士から介入通知が届くと,個人再生以外の債務整理においても,クレジットカードの利用はできなくなります。

(2)利用していないクレジットカードも使えなくなる

現在利用していないクレジットカードについては,個人再生直後に解約されることはありませんが,カード会社が信用情報を確認した時点で順次解約されます。遅くとも,カードの更新の際には信用情報を確認するので,その時点で更新されずに解約されるでしょう。
 また,一括払いであっても,個人再生手続中にクレジットカードの利用はしていけない状況になりますので,利用していないクレジットカードも解約するなど利用しないことが必要です。

(3)他社のクレジットカードも作成できない

手続き時点で持っていなかったクレジットカードでも,事故情報は信用情報機関に記録されますので,新規カード作成を申し込んでも審査で落ちてしまいます。

(4)デビットカード,プリペイドカードは利用可能

個人再生をするとクレジットカードは使えなくなりますが,代用になるデビットカードやプリペイドカードは基本的に信用情報の審査がないため,使い続けることができます。

・デビットカード

デビットカードは,一般に,紐づけされている銀行口座から即座に利用額が引き落とされるカードです。銀行口座に入っている預貯金の額しか使えませんが,お金を借りることがないため,信用情報の審査がありません。

・プリペイドカード

カードに現金をチャージすることで利用できるカードです。

(5)クレジットカードが使えなくなるのは本人だけ

クレジットカードか利用できなくなるのは本人名義のカードのみで,例えば夫が自己破産をしても,妻のクレジットカードには影響はありません。信用情報はあくまで個人を対象としているためです。

ただし,家族カードを使っていた場合,カードの契約者が個人再生をすると,家族カードを利用している人はカードが使えなくなります。この場合は,カードの契約者の信用情報に基づいて審査が行われるからです。
また,クレジットカード自体の契約ではあまりありませんが,連帯保証人や保証人がいるケースでは,連帯保証人や保証人の信用情報に影響が出ます。

個人再生の4つのメリット

個人再生の主なメリットとしては,(1)借金の大幅な減額が可能,(2)財産が手元に残せる,(3)住宅ローンが残っている自宅を守ることができる,(4)職業制限がない,といった点があります。

(1)借金の大幅な減額が可能

個人再生をすると,借金を原則5分の1~最大10分の1程度まで大幅に減額できます(最低弁済額100万円。また,減額幅は借金の金額や財産の額にも左右されます。)。債務整理の中でよく使われる手続きである任意整理は,原則として借金の元本を減額することはできません。しかし,個人再生ならば借金の元本も大きく削ることが可能です。

(2)財産が手元に残せる

自己破産をすると,一定額以上の財産が裁判所によって処分されますが,個人再生の場合はそうしたルールはないため,どうしても守りたい財産を手元に残すことが可能です。

ただし,不動産など高額の財産を残したい場合,財産の相当額は返済する必要がありますので,借金の減額幅が少なくなり,個人再生をするメリットが薄れてしまうことがあります。詳しくは,専門家に相談してください。

(3)住宅ローンが残っている自宅を守れる

個人再生の大きな特徴として,「住宅ローン特則」を利用することで,住宅ローン返済中の家を手放さずに借金を減額できることがあります。

自己破産をすると,原則不動産は手放すことになります。しかし,個人再生であれば,住宅ローンは通り払い続け,その他の債務を減額して返済することが可能です。

(4)職業制限がない

自己破産手続きの最中は,警備員や生命保険の外交員など,一部の職業に就くことができなくなります。しかし,個人再生にそのような制限はないため,制限職種の人も借金の負担を軽くしながら仕事を続けることが可能です。

クレジットカードが作れない期間はどれくらい?

事故情報はずっと載っているわけではなく,個人再生の場合,下記の期間を経過すると,事故情報が抹消されます。

  • 株式会社日本信用情報機構(JICC)……個人再生をした事実が,契約終了から5年を超えない期間
  • 株式会社シー・アイ・シー(CIC)……個人再生をした事実が登録されるのではなく,支払条件や支払総額の変更として登録されるため,契約終了から5年を超えない期間
  • 全国銀行個人信用情報センター(KSC)……手続開始決定日から7年を超えない期間

個人再生をしても,5~7年経てば,その事故情報は消えることになります。

個人再生後,いつからローンを組むことができるようになるのか?

個人再生後,5~7年程度経過した後は,信用情報機関に問い合わせて情報開示請求をすることで,個人再生の履歴が消えたかどうか確認することができます。

上記3つの期間とも,本人の請求であれば,1,000円~1,500円程度の手数料で,ネットまたは郵送にて取引履歴を取り寄せることができます。事前にホームページで確認してから申し込みましょう。

個人再生後のローンで気をつけるべきこと

個人再生のブラックリストの期間が終わった後,ローンを組む際は,(1)個人再生の際に債権者になった会社とそのグループ会社は避ける,(2)最初は小さな信用取引や分割払いから始める,(3)短期間に何社もローンを組まない,といった点に気を付けると,審査に通りやすくなります。

(1)個人再生の際に債権者になった会社とそのグループ会社は避ける

個人再生の際,債権者として手続きに組み込まれた企業およびそのグループ会社に関しては,いわゆる「社内ブラック」になっている可能性が高く,ローンの審査に落ちる可能性が高くなります。

信用情報機関の記録とは別に,それぞれの企業は社内に顧客情報を持っており,そこにネガティブな情報が記載されることを「社内ブラック」と言います。信用情報機関の記録は一定期間で消えますが,社内ブラックにはいつまでも載っている可能性が高く,ローン等の申し込みは避けたほうが無難です。

(2)最初は小さな信用取引や分割払いから始める

ブラックリストが終わった後は信用情報が真っ白になっています。その状態で住宅ローンなど高額のローンに申し込むと,審査に落ちることがあります。まずはスマートフォンの分割払いや,一般消費者向けの審査が緩めのクレジットカード等を利用した方が審査が通りやすいかもしれません。

(3)短期間に何社もローンを組まない

数か月などの短期間に3社以上のローン申し込みをすると,資金繰りが苦しい人と思われて審査落ちすることがあるようです。これを「申し込みブラック」と言い,6ヵ月~1年ほど審査が通りにくくなるようです。
急な支出があっても,短期間に複数社に申し込みをするのは避けたほうが良いでしょう。

 もっとも,個人再生手続の計画案に基づく返済が完了した後,再度借入をする場合には慎重になる必要があります。万が一,また返済ができなくなってしまった場合に,同じように個人再生手続ができるとは限りません。
弁護士の立場としては,一度手続きをした方には,今後借入をしないように気を付けてくださいね,と助言しています。