弁護士費用の種類と支払えない場合の対処法

弁護士費用の種類と支払えない場合の対処法

弁護士に民事事件を依頼した際に支払う費用の種類や、債務整理事件の弁護士費用の相場について解説します。また、弁護士費用が払えない場合にどうしたら良いのか、法テラスの法律扶助や、各法律事務所が行っている分割払い・後払いについてもご紹介します。多くのお金に困っている人が、弁護士費用を支払いながら借金問題を解決しています。あわせて、お金をかけて弁護士に依頼するメリットについても触れました。

弁護士費用にはどういったものがあるか?

民事事件の弁護士費用には、「相談料」「着手金」「成功報酬」「日当」「実費」などがあり、困った時の最初の法律相談に関しては、事件によっては無料とする法律事務所も増えています。

「借金で首が回らない」「不当な理由で会社をクビにされた」「遺産相続で親族ともめごとになりそうだ」など、法律トラブルに見舞われたときに、もっとも気になるのは「弁護士費用はいくらかかるのか」と言うことでしょう。

弁護士費用は、依頼する事件によって異なります。不動産取引等、金額の大きな民事事件であれば、弁護士費用も高くなります。しかし、任意整理や自己破産などの債務整理の場合は、お金に困っている人でも無理なく払えるように、法律扶助や分割払い、後払いなどが可能なことも多いです。

弁護士費用は、各法律事務所のホームページなどに記載がありますが、不明点や疑問点がある場合は、法律相談の際、弁護士に直接問い合わせをされるとよいでしょう。弁護士は、説明したり説得したりする能力が問われる職業です。しっかり説明してくれる弁護士ならば、事件解決の点においても信頼ができます。漠とした回答しかない、はぐらかすなど、不明な点が残る場合は、別の弁護士を探したほうが良いかもしれません。

弁護士費用の種類

一般的な民事事件の費用としては、以下の種類を支払います。かつては、弁護士費用は一律に決められていましたが、現在は自由化されているため、支払い方法や金額は各弁護士によって異なります。

①相談料

30分5千円、1時間1万円としている事務所が多いようです。しかしながら、多重債務や債務整理などの借金問題に関しては、依頼者にお金がないことが想定されるので、無料で相談を受け付けている法律事務所が多くなっています。

債務整理以外の民事事件に関しても、分野によっては相談料無料とする法律事務所がありますので、金銭面で不安がある人は、こうした法律事務所に相談されるとよいでしょう。

②着手金

着手金とは、弁護士と委任契約を締結した際に支払うもので、依頼の成功・失敗にかかわらず、返金はされません。報酬金の内金や手付とは違うので、気を付けてください。

依頼する事件や内容によっては、着手金を無料としている法律事務所もあります。

③成功報酬

事件が解決した場合、成功報酬を支払います。完全に成功した場合はもちろん、一部成功の場合でも、その割合に応じてお金を支払います。全面敗訴など、まったく目的が達せられなかった場合は、成功報酬を支払う必要はありません。

④日当

遠くの裁判所に出張したり、遠方で調査が必要になったりして、弁護士が遠方に行く必要が発生した場合に支払います。日当のほか、交通費や宿泊費も依頼者の負担となります。

⑤実費

コピー代や、裁判所を通じた手続きの際に必要な印紙代、切手代などがあります。また、事件によっては裁判所に保証金や鑑定料などを収めることもあります。

債務整理に必要な弁護士費用の相場

債務整理には、主に任意整理、自己破産、個人再生の3つの手続きがありますが、弁護士を通した私的交渉である任意整理は比較的弁護士費用が安く、5~20万円程度が相場です。裁判所を通す手続きである自己破産や個人再生は裁判所費用もかかるため、費用総額は30万円~80万円程度と高くなります。以下に、相場をご紹介します。

①任意整理

減額報酬とは、引き直し計算の結果や、相手との交渉により借金を減額することができた場合にのみ発生する報酬で、借金が減額されなければ発生しません。このように、債権者の数によって弁護士費用が異なりますが、大体5万円~20万円程度かかると思っておくと良いでしょう。

②自己破産

自己破産の手続きには「同時廃止」「少額管財」「管財事件」の3種類があり、かかる費用は異なります。

個人の破産の場合、ほとんどは同時廃止か、少額管財となります。手続きの種類は破産する人が選べるわけではなく、裁判所が破産者の状況に応じて手続きの種類を決定します。おおよそ以下のような基準で振り分けられます。

  • 同時廃止…お金に換えられるような一定額以上の財産を持っていない人
  • 少額管財…財産がある人、またはギャンブルや浪費などの理由で借金をした人

実務では、多くの人が同時廃止となっています。このように、同時廃止になるか、少額管財となるかでは手続きにかかる費用が大きく異なります。そのため、事前に弁護士に相談して、ご自身の状況ではどちらの手続きになりそうか、確認されることをお勧めします。

③個人再生

個人再生は債務整理の中でも複雑な手続きなので、弁護士費用は比較的多くかかります。また、裁判所が選任する個人再生員への報酬なども必要になるため、費用総額は70万円程度と高額になります。

弁護士費用を支払う余裕がない場合は依頼できないのか?

借金に困って弁護士費用を捻出できない場合でも、法テラスによる法律扶助や、各法律事務所が独自に設けている分割払い、後払いなどを利用することで、多くの人が債務整理をして借金問題から解放されています。

①民事法律扶助

法テラス(日本司法支援センター)という、国が設立した法律トラブルの案内所にて、以下の法律扶助を行っています。

3回まで無料法律相談が受けられる

無料相談は初回の1回のみではなく、3回相談できるので、より詳細に相談することができ、弁護士との相性も見極めることができます。

弁護士・司法書士への依頼が必要となった場合、費用の立て替え

弁護士や司法書士に依頼すると、原則として契約の時点で一括払いが必要ですが、法テラスの立て替え払いを利用した場合、毎月5,000円~1万円程度の分割払いで少しずつ無理なく返済ができます。また、法テラスを利用した場合、一般的な依頼よりも弁護士費用そのものが割安になります。

なお、民事法律扶助は以下の条件に当てはまる方が対象です。

(1)給与等の収入が、法テラスが定める一定の金額以下であること

例えば、単身者の場合は月収18万2,000円以下で、資産が180万円以下となっています。

コロナ禍の影響で、収入が昨年に比べ大幅に減少した方に関しては、資力審査において、考慮して判断するとのことです。事前に法テラスにご相談ください。

(2)勝訴の見込みがないとは言えないこと

「和解や調停、示談等による解決」「自己破産の免責」の見込みがある場合も含みます。簡単に言うと、「その法律トラブルが、弁護士に依頼することで解決する可能性があること」という趣旨です。

(3)民事法律扶助の趣旨に適すること

宣伝のためであったり、犯罪行為のため、報復したいという感情のためだけに相談や依頼をすることはできません。

詳しくは、法テラスのホームページをご覧ください。

「法テラス:民事法律扶助(https://www.houterasu.or.jp/housenmonka/fujo/index.html)」

法テラスを利用するメリット・デメリット

法テラスを通じて弁護士に依頼すると、分割払いが可能になるだけではなく、普通に法律事務所に依頼するよりも大幅に安い費用で問題が解決できることがあります。お金に困っている方には大きなメリットです。

他方、デメリットとしては、法テラスの飛び込み相談では弁護士を選べないので、債務整理の経験豊富な弁護士にあたるとは限らないことです。法テラスの弁護士は、職歴10年未満の比較的若い弁護士が多いのが特徴です。未熟な弁護士にあたってしまって、期待したような結果にならなかった、という可能性があります。

法テラスで実績のある弁護士に依頼したい場合は、法テラスと契約していて、かつ、信頼がおけそうな弁護士を、自分で情報収集して探してくる必要があります。しかし、まったく法律に関係のない世界で生きてきた方にとっては、簡単なことではないでしょう。

法テラスの無料法律相談で納得が行かなかった場合は、通常の費用がかかってしまいますが、評判の良い町の法律事務所にて、改めて無料相談をされてみるか、お住いの市町村などが行っている無料法律相談を利用されるとよいでしょう。

市町村の無料法律相談の場合、役所等から信頼を得ている弁護士が担当するので、比較的当たり外れが少ないというメリットがあります。

②分割払い・後払い

債務整理はお金に困っている人がするものなので、各法律事務所も、法テラスのような公的扶助とは別に、分割払いや後払いの制度を設けていることがあります。こうした制度を利用したい場合は、まず法律相談の際に、分割払いや後払いが可能かどうかを聞いてみましよう。

また、債務整理の内容によっても費用の支払い方法が違ってきます。任意整理の場合は、裁判所を通さない手続きなので、弁護士費用のみが発生します。したがって、法律事務所も分割払いや後払いといった対応がしやすくなっています。

しかし、自己破産や個人再生の場合、弁護士費用のほかに、裁判所に支払う費用も発生します。手続きによっては数十万円を裁判所に払うこともあり、しかも裁判所費用は一括払いする必要があります。

自己破産や個人再生を検討されている場合、裁判所費用も含めて、費用の分割払いや後払いの方法を具体的に弁護士と相談されたほうが良いでしょう。

債務整理を依頼すると金融機関等から督促が来なくなり、これまで借金の返済に充てていたお金の一部を、弁護士事務所への分割払いに充てることができるようになります。そのため、多くの人が弁護士費用を無理なく支払うことができています。

分割払いの回数と注意点

分割払いの際は、弁護士が「毎月いくらくらいだったら無理なく支払えるか」を一緒に考えます。そのため、厳格に、「何回払い」という定めを置くことは少ないですが、目安としては6回~12回程度が一般的です。

分割払いに手数料や金利が発生することはほとんどありません。法律事務所によっては分割払いに事務手数料を取るケースがありますが、貸金業者のように高額な利息を請求されることはありません。

借金の分割払いに悩まされてきた人にとっては、分割払いというと、高額の利息や手数料を取られるもの、という先入観があると思います。しかし、弁護士事務所の本来の目的は、債務整理により借金に困っている人の生活再建の手助けをすることです。分割払いにより高額な手数料を請求して儲けようとすることはないので、安心してください。

弁護士に依頼するメリット

民事訴訟も債務整理も、弁護士に依頼したほうが安全・安心です。なぜなら、法律の専門家に味方になってもらうことで、自分に有利な結果になりやすいというだけではなく、全体としてかえって費用を安く済ませられるケースもあるからです。

弁護士費用が捻出できない、あるいはもったいないという理由で、弁護士に依頼せずに民事訴訟や債務整理を行う人もいます。実は、どちらも、法律上は弁護士に依頼しなくとも個人で手続きが可能となっています。

しかしながら、以下の理由から、債務整理などの法律トラブルは弁護士に依頼されることをお勧めします。

弁護士に依頼したほうが自分に有利な結果になりやすい

個人で貸金業者等と交渉すると、法律知識のない素人に対しては業者は強気に出てきて、貸金業者優位の結果になりやすいです。この点、法律知識と資格のあるプロが間に立つことで、相手方も無理にごり押しするような交渉はできなくなります。結果として、弁護士に依頼したほうが、しないほうよりも、借金を多く減額出来て、全体としてはお得になる可能性があります。

また、裁判所を通した手続きにおいても、弁護士に依頼していると有利に進めやすくなります。裁判官としては、依頼人に対し弁護士からの指導やアドバイスが期待できることから、心証が良くなるからです。

弁護士に依頼しないと裁判所費用が高額になることがある

自己破産や個人再生の場合、手続きが複雑なため、弁護士に依頼することが強く推奨されています。弁護士無しでこれらの手続きを行うと、ケースによっては裁判所が破産管財人や個人再生委員を選任することになり、裁判所費用がより高額になることがあります。