債務整理とは?意味や種類,メリットデメリットについて解説

債務整理とは?意味や種類,メリットデメリットについて解説

債務整理とは,借金に困った人が,借金問題を解決する法律的な手段を意味します。借金の減額や返済義務の免除,月々の支払い負担の軽減などが可能で,借金問題の軽重や状況に応じて大きく4つの種類があります。

債務整理を法律家に依頼すれば,金融機関からの取り立てや督促をストップすることができます。

債務整理とは~4種類を簡単に解説~

債務整理は,多額の借金や多重債務で苦しんでいる人が,法律的な手続きにもとづいて借金を整理し,借金苦を軽減したり,あるいは帳消しにしたりできる方法です。債務整理には大きく分けて以下の4つの種類があります。

(1)任意整理

弁護士等の法律家が,業者や金融機関等と個別に交渉をして,借金の利息や遅延損害金の免除,月々の支払い負担の軽減などを行う手続きです。

(2)自己破産

裁判所に申立てをし,一定の要件を満たす場合,借金を帳消しにする手続きです。 ただし,破産者は一定額以上の価値のある財産は手放さなければならない,破産者である期間は一定の職業に就けない,税金等一部の負債については返済義務が残る等の制約はあります。

(3)個人再生

裁判所に申立てをし,一定の要件を満たす場合,負債額の原則5分の1(債務額によって変動有,最低100万円)もしくは保有している財産の価値(清算価値といいます)の大きい額を原則3年間で返済をすることにより,それ以外の借金の返済義務を免除してもらう手続きです。
個人再生では,住宅ローンの返済中の不動産やその他の財産(ローンがないもの)を維持したまま,手続きを進めることができます。また,自己破産のような職業制限はありません。

(4)過払い金請求

過去の借金で,法律の制限よりも高い利息を支払っていた場合,払いすぎた利息を返すよう貸金業者やカード会社などに請求することができます。

これら4種類のうち,(4)の過払い金請求(完済分)はデメリットがほとんど存在しません。

(1)任意整理は,借金の元本は原則として減額できないため,比較的メリットが少ないです。しかし,周囲に知られるなどの社会的なリスクも少ないのが魅力で,多くの人が任意整理を行って,月額返済額の負担を減らし,返済を続けています。

一方,(3)個人再生や(4)自己破産は,強力な減額や借金帳消しの効果を持ちますが,それだけ社会的なデメリットも大きくなりますし,裁判手続きとなるため,一定の要件を満たす必要があります。

債務整理は,借金で行き詰った人が再び健全な人生を送れるようにするための手続きです。一番デメリットの大きい自己破産のケースでも,「選挙権がなくなる」「公的年金が受け取れなくなる」などの重大な人権制約が発生することはありません。

債務整理によるデメリットを過度に恐れずに,ご自身の借金の負担の程度や,収入状況等に合わせた最適な債務整理を行いましょう。

弁護士などの専門家に依頼しないで債務整理をすることも可能ですが,自己破産や個人再生は法的に複雑な部分も多く,通常は困難な場合が多いです。また,任意整理や過払い金請求においても,ご自身での交渉では失敗したり,損をしたりするケースも多々あります。失敗しない債務整理のためには,専門家への依頼をお勧めします。

債務整理の意味~「債務」とは

「債務」とは,特定の人に対して何らかの行為や給付をしなければならない法律上の義務のことをいいます。特に,債務整理における「債務」とは,借金を返済する義務のことを意味します。債務の負担を減免するための手続きを総称して,債務整理といいます。

「債務」の対義語は「債権」であり,特定の人に対して何らかの行為や給付を求めることができる法律上の権利のことをいいます。債務整理における「債権」とは,借金の返済を受ける権利のことを意味します。

借金をした人を「債務者」,お金を貸した金融機関や貸金業者・個人などを「債権者」と呼びます。

債務整理の種類を詳しく解説

債務整理には,主として,任意整理・自己破産・個人再生の3種類があります。

これとは別に,過払い金返還請求というものもあります。過去の借金返済において,払い過ぎている利息がある場合,過払金の返還請求権が発生しているため,時効が成立していないのであれば返還を受けることができます。

また,最近ではあまり利用されていない制度ですが,法律家に依頼をせず,自分自身で対応する手続きとして,「特定調停」というものがあります。裁判所へ申立てを行い,債権者との間で返済内容について協議・合意を行う手続きです。

【本来の意味での債務整理】

<裁判所を通さない手続き>
  • 任意整理

弁護士と債権者のあいだで私的な交渉を持ち,借金の負担を軽減するための減額やリスケジュールなどの調整を行います。私的なやり取りなので大幅な減額は望めませんが,和解後の利息や遅延損害金のカットが可能です。

裁判所を通さない手続きのため,借金を整理する対象を選べます。例えば,「消費者金融からの借金は対象にしたいが,恩人からの借金は全て返したい。また自動車ローン中の車を手放したくない」といった要望に応じて,特定の相手との借金だけを整理することも可能です。(ただし,その後,他の手段へ方針を変更する際には問題が生じますので,慎重に検討する必要があります。)

任意整理は私的な話し合いではあるものの,弁護士から債権者に受任通知が発送されると,それ以降,金融機関等の債権者は弁護士を通じることでしか,債務者と連絡が取れなくなります。そのため,直接の催促や督促も止まります。

また,裁判所を通す手続きには様々な書類の作成・提出が必要ですが,任意整理にはそうした煩雑な作業が少なく,手続きしやすいのもメリットです。

任意整理したことを周囲や家族に知られたくない場合も,弁護士にその旨を事前に相談すれば,連絡の際に配慮することにより,秘密にすることも可能です。

<裁判所を通す手続き>
  • 自己破産

債務整理の中で最も強力な解決手段であり,裁判所に申立てを行い,「免責」が認められれば,すべての借金が帳消しになります。ただし,税金などの一部の債務は免除されません。

自己破産手続きを行うと,家財道具など生活に必要な財産を除き,一定額以上の財産は全て処分され換価されてしまいます。このお金をすべての債権者に平等に配当します。残りの借金については,裁判所の免責許可決定を受けることにより,返済義務が免除されます。

このように,免責の効力はとても重要ですが,ギャンブルや浪費といった理由で借金をした場合は免責不許可事由に該当し,免責が認められません。とはいえ,裁判官の裁量による免責も可能なので,実務ではギャンブルや浪費が原因でも多くのケースで免責が認められています。

自己破産のデメリットとしては,このほかにも官報への住所・氏名の掲載や,自己破産手続き中の資格制限により一定の仕事に就けなくなるなどの制約があります。

資格制限のある仕事として代表的なものには,弁護士などの士業,警備員,宅地建物取引主任者,生命保険募集人などがあります。もっとも,資格制限は自己破産の手続き中のみ発生し,免責許可決定が確定し復権すれば,資格制限は解除されます。

  • 個人再生

個人再生は,裁判所を通した手続きで,自宅などの財産を処分することなく原則5分の1という大幅な借金減額が可能な債務整理です。主に自宅の住宅ローンを返済中の債務者が,自宅に住み続けながら借金整理をする状況を想定しています。

個人再生には,小規模事業者をはじめとしたさまざまな職業の人が申請できる「小規模個人再生」とサラリーマンを想定した「給与所得者等再生」との2種類があります。

デメリットとしては,官報に住所・氏名の掲載はされますが,自己破産のような資格制限は発生しません。

強力な上にリスクも比較的少ない手段ですが,将来にわたって継続的かつ反復的に収入が見込めることや,住宅ローン等を除く無担保債務の総額が5,000万円以下であることなどといった要件があります。また,個人再生の要件や手続きが,自己破産よりも複雑で手間がかかるというデメリットがあります。

住宅ローン返済中の自宅を守りたい場合,住宅資金特別条項という制度を利用することで,自宅を手放すことなく手続きが行えます。この場合,住宅ローンだけはこれまで通り返済を続ける必要がありますし,また,住宅ローン債権者との間で,個人再生手続きを取ることについて協議する必要があります。

【権利行使としての債務整理】

  • 過払い金請求

過払い金請求は,過去に借金を返済したことがある人が,利息制限法の上限利率よりも高い利息を払っていた場合,過払い金として業者に返還を請求する手続きのことです。平成22年より前にお金を借りたことがある人には,過払い金が発生している可能性があります。

過払い金請求権は完済から10年経つと時効になってしまうので,心のあたりのある人は早めの手続きが必要です。

かつては,利息制限法という法律と,出資法という法律が,それぞれ違った上限利率で借金の利息を規制していました。そのため,「利息制限法の上限利率よりも高いが,出資法の制限利率以内である」という高金利(いわゆるグレーゾーン金利)が存在していました。しかし,2010年6月の法改正により出資法の上限金利が引き下げられ,グレーゾーン金利はなくなりました。

グレーゾーン金利で利息を取っていた業者には,払いすぎた利息を請求できます。払いすぎた利息の有無は,法定金利に引き直して計算(「引き直し計算」)をすることで正確な額を算出できます。引き直し計算をした結果,過払い金が発生していれば,その金額によって,過払い金を受け取ることができたり,借金の金額が大幅に減少したりします。

他の債務整理は「債務」を整理する手続きですが,過払い金請求は借金を返済した人がお金を返してもらう権利である「債権」を持っていることから,他の債務整理とは少々特色が異なります。

<法律家を介さない・裁判所を通す手続き>
  • 特定調停

弁護士を通さずに,簡易裁判所による手続きで債権者と借金減額などの交渉を行います。裁判所において,調停委員が仲裁をする形で,債権者との間で交渉をしていきます。
しかし,自分自身で申立書類を準備する必要がありますし,また,債務者に不利な調停内容になるケースもあります。そのため,特定調停の申し立て数は年々減少しており,調停の成立率も低くなっています。

債務整理のメリットデメリット

【共通のメリット】
  • 借金の減額や免除,リスケジュールにより,借金苦から人生を立て直すことができる

債務整理の最大のメリットです。借金を帳消しにできる自己破産や,大幅減額できる個人再生はもちろんですが,基本的に借金の元本を減額できない任意整理であっても,月額の返済金額を抑えることができた等負担軽減につながる方が多いです。

  • 弁護士に依頼することで,取り立てや督促をストップできる

借金の滞納により,督促や取り立てに悩まされている方は,債務整理を弁護士に依頼することで金融業者からの通知や連絡を止めることができます。弁護士が各債権者に送る受任通知には,債権者が債務者と直接連絡が取れなくするという効果があるからです。
ただし,債権者は支払いが滞った場合,裁判所に借金の返済を求めて訴訟を起こすことが可能です。したがって,既に訴訟が提起されている場合や長期間の滞納がある場合等,任意整理をしたとしても,裁判を避けられない場合があります。この場合でも,弁護士が代理人となることで,訴訟上や訴外で和解をしていくことが可能なことが多いです。

【共通のデメリット】

  • 信用情報機関に債務整理の記録が残る(ブラックリスト入り)

「債務整理をするとブラックリストに載る」というのは本当ですが,これは俗に,お金の貸し借りの情報を管理する国に認められた組織「信用情報機関」に,一定期間,債務整理の情報が載ることを意味します。ブラックリストという非合法な闇の組織があるわけではありません。

信用情報機関は,金融機関や貸金業者が登録し,お金を融資する際に過去の信用情報を確認するために設けられています。借金をしたことのある人ならば,申請して自分の記録を閲覧することができます。

ブラックリストに載るデメリットとして,以下のようなものがあります。

  • お金の新規の借り入れが難しくなる
  • クレジットカードが使えなくなる
  • キャッシングができなくなる
  • スマホ端末購入に際し,分割払いができなくなる
  • 他人の借金や奨学金の保証人になれない
  • 賃貸物件を借りる際に,保証会社の審査が通らなくなる可能性がある 等

信用情報機関の情報は,本人が申請する場合を除き,借金やクレジットカードの融資等の審査のためでなければ閲覧することはできません。信用情報の目的外利用は禁止されているため,上記のようなお金の融資や審査に絡むこと以外で,ブラックリストの情報が債務者の不利益に使われることはありません。

債務整理から5~10年ほどの期間が経てば,記録は削除されますので,永久にデメリットが生じるわけではありません。


原則として,債務整理をするとすべての手続きでブラックリスト入りしてしまいますが,例外的に,過払い金請求(完済しているもの)の場合は信用情報には影響しません。

債務整理手続きの選択方法

債務整理をするための基準となる借金額というのはなく,ご自身の生活状況に照らして,借金の負担が重いと感じている方なら,だれでも弁護士に相談できます。専門家の意見を聞きながら,4つの債務整理のうちメリットやリスクを総合的に考慮して,ご自身に最適な債務整理を選択されることをお勧めしします。

【任意整理に向いている人】

安定的な収入があり,借金を3~5年程度の分割払いにすれば支払いきれる人に向いています。アルバイトや非正規雇用であっても,収入から返済費用をねん出できるのであれば,任意整理は可能です。特定の借金だけを対象にしたい人,家族や周囲に知られたくない人に最適です。

【自己破産に向いている人】

自己破産は,無収入の人でもできる債務整理です。借金額が大きく,収入や財産と比較して,返済が困難と認められる場合です。一定の収入があっても,借金額やその人の置かれた状況によっては,自己破産を選択したほうが良いケースもあります。

【個人再生に向いている人】

安定した収入があり,無担保の借金の総額が住宅ローンを除いて5,000万円以下で,住宅などの財産を手放したくない人に向いています。

【過払い金請求に向いている人】

過払い金請求は,平成22年より前に貸金業者等から借金をして,利息を払いすぎており,過払い金請求権がある人ならだれでも請求できます。ただし,すでに時効が成立している場合や業者が倒産している場合は,請求できません。
借金問題は病気と同じで,早期に治療するほどリスクや社会的なデメリットが少なく解決できます。借金が苦しいと感じたら,無理に頑張ろうとせず,弁護士に相談してみましょう。