自己破産したその後の生活はどう変わる?

自己破産したその後の生活はどう変わる?

自己破産後の生活の変化や,家族への影響についてまとめました。自己破産すると一定期間,新たな借り入れやクレジットカードの利用ができなくなります。他方で,復権(免責決定が確定)すれば職業の制限はなくなります。自分や家族の就職や転職,結婚にも基本的に影響はありません。その他,自己破産によって考えられる人生への影響を解説します。

自己破産後の生活はどう変わるのか?

自己破産をした後も,基本的には家族と共に普通の生活を送ることが出来ます。自己破産後の最大の影響として「自己破産後は5~10年程の期間,借金をすることが難しくなる」ということはありますが,それ以外に大きく生活が変わることはありません。

「自己破産したらその後はまともな人生を送れない」「自己破産は人生の終わり」という誤解をする人も多いのですが,実際は,自己破産は借金に困った人がもう一度人生をリスタートするために設けられた制度で,多くの人が自己破産により生活を立て直すことができています。手続きが終われば資格や職業が制限されることもありません。また,自分も家族も,結婚や就職,転職が自己破産により制約されるということもありません。(自己破産で,事業の継続ができなくなるという場合を除いて)

「自己破産したことがばれたら,会社をクビになるのでは」「恋人や婚約者の親に知られて破局するのでは」といったことも,あまり心配する必要はありません。

そもそも,自己破産したことが同居の家族以外の人に知られるリスクは低いといえるでしょう。自己破産をすると国の広報誌である「官報」に住所や氏名が掲載されますが,官報をチェックしているのは銀行などの金融業や公共機関といった職業の人がほとんどで,一般の人が目を通す可能性は低いと考えられます。もっとも,官報をネット上で閲覧することも可能ですので,絶対に周りの人に知られないというわけではありません。

自己破産がその後の人生にどんな影響を及ぼすのか,生活の変化についてまとめました。自己破産に対する不安を払拭する助けになれば幸いです。

自己破産前の借金や債務はどうなるか

自己破産をして免責許可を得ると,自己破産前の借金や債務は,どれほど高額でも返済義務がなくなります。税金や社会保険料といった一部の債務(非免責債権)を除き,それ以降一円も支払う必要はありません。

ただし,財産隠しをしたり,特定の債権者にだけ返済したりするなど,自己破産手続に関して不誠実な行動があった場合,免責が下りなくなる可能性があります。免責はとても重要な手続きなので,スムーズに許可が下りるよう,誠実な行動を心がけましょう。

嫌がらせや債権回収の可能性はあるのか?

一般的な債権者(金融機関やカード会社など)であれば,自己破産することに対して嫌がらせをしたりすることはありません。ただし,債権者は支払いが滞れば訴訟をし,差押えをする権利はありますので,長期間自己破産の申立てができない場合などはリスクが高まります。

また,自己破産手続を弁護士に依頼した場合,契約後,弁護士が各債権者に受任通知を送付した時点で,借入先(金融機関やカード会社など)から直接,連絡が来ることはなくなります。受任通知には,連絡は弁護士を通して行うよう書いてあり,一定の場合には法的な拘束力も発生します。一刻も早く業者からの督促を止めたい場合は,弁護士に依頼することが得策です。

ただし,個人から借りた場合や,闇金から借りた場合は,嫌がらせ等の被害にあう可能性はあります。しかし,そうした要求に応じる必要は全くありません。トラブルがあった場合は,弁護士に相談してください。

税金や国民健康保険料はどうなるのか?

税金や国民健康保険料,罰金などは,「非免責債権」と言って,自己破産をしても支払いが免除されません。「自己破産するほどお金に困っているのだから,税金も免除してもらえる」ということはないので注意して下さい。

一括で納付できない場合は,早めに所管の税務署や公共機関等に相談することで,分納などの対応をしてもらえることがあります。

新たな借入は可能なのか?

自己破産の最大のデメリットとして,自己破産を行うと一定期間新たな借り入れを行うことが難しくなります。新規の借入が難しくなる期間は5~10年程度です。

日本の合法的な金融機関や貸金業者,信販会社などは,「信用情報機関」という個人のお金の貸し借りを記録する機関に加盟しています。自己破産をすると,この信用情報機関に自己破産の情報が記録されてしまいます。これを俗に「ブラックリスト入り」と言います。

金融機関等は新たにお金を貸す際,信用情報機関の記録を閲覧して融資するかどうかを審査するため,自己破産情報があると審査に落とされる可能性が高いのです。

信用情報機関は日本に3つあり,自己破産の情報が載っている期間は機関によって5~10年と違いがあります。長くても10年経つと記録は削除され,また新たな借り入れをすることができます。
 ただし,一度自己破産をしている以上,再度の借入をしないように生活を送っていただくことが大切です。自己破産手続きの中で,裁判官からもそういった注意をされることも多くありますので,心に刻んでおいていただきたいと思います。

クレジットカードやローンを組むことは可能か?

クレジットカードやローンも,新たな借り入れと同様に,申し込み先の企業は信用情報機関の記録を閲覧して審査しますので,自己破産後5~10年,クレジットカードの作成や利用,ローンの申し込みなどはできなくなります。

オンラインショッピングにはクレジットカードがないと不便ですが,最近はデビットカードを始め,ほかの支払い方法も多く使われていますので,そうした代替手段を利用しましょう。クレジットカードは便利なあまり使いすぎることがあり,人によってはそれが浪費の原因になることがありますが,そうした癖を治す良いきっかけになることでしょう。

ローンについては,非合法の闇金業者が「自己破産をしても借り入れができる」と勧誘してくることがあります。しかし,そうした業者の誘いには絶対に乗らないでください。

保証人にはなれる?

自己破産をして,ブラックリスト入りしている期間中は,他の誰かの借金の保証人になることは難しくなります。法律上,自己破産直後でも他人の保証人になることは禁止されていませんが,金融機関などは保証人についても信用審査を行いますので,自己破産の情報が記録されている5~10年間は,事実上保証人になることができなくなります。(もっとも,そもそも,保証人になることには慎重になるべきではあります。)

親や子供,配偶者など,家族・親族の借金の保証人にもなれないので,例えば配偶者が起業する場合や,子供が奨学金を利用する場合などには,影響が考えられます。

しかし,近年では,個人の保証人の代わりに,企業に保証料を支払うことで借金の保証人となってくれるケースも増えています。お金はかかりますが,そのような仕組みを利用すると良いでしょう。

自己破産後に財産を所有することは可能?

自己破産手続きが終わってから取得した財産は,自由に使い,所有し,処分することができます。免責によって借金が消滅しているので,新たに得た財産を借金の返済に充てる必要はありません。

先述のように,自己破産後一定期間はローンが組めないので,住宅や車などをローンで購入することは難しくなります。しかし,車であれば中古で安い車種を一括払い購入することは可能です。

また,スマホの分割払い購入も難しくなりますが,こちらも中古品の一括購入により安く手に入れることができます。

ローンやクレジットカードが使えないことにより不便な点もありますが,代替手段はありますので,工夫して借金のない生活を送りましょう。

自己破産後も持てる財産

自己破産をしても,生活に必要な道具や,一定の価格(20万円程度)以下の価値の財産は手元に残せます。自己破産した際に手放さなくてもいい財産のことを「自由財産」と呼んでいます。

自己破産をすると,一定以上の金額の財産は裁判所によって処分・換価されてしまいます。これを過度に恐れる人がいますが,実際は家財道具など,生活に必要な財産の多くは自由財産となり,手元に残り,普段通りに生活することができます。使っているテレビやスマホなどは,特別に高価なものでない限り,そのまま使い続けることができます。

破産者が持ち家や土地,価値の高い財産などを持っていない場合は,裁判所により処分・換価される財産が一つもなく手続きを終えることができます。

自己破産後に賃貸物件が借りられなくなる?

自己破産後にアパートなどの賃貸借契約を結ぶことは可能です。自己破産したことを賃貸人に告げる必要もありません。ただし,家賃保証会社が信販系の企業の場合,入居審査に通らない可能性があります。

信 販系の会社は,入居審査の際,契約者の信用情報を調べて審査を行うことがあります。この際,ブラックリスト入りしていると,入居審査に落ちることがあるのです。

対策としては,入居を希望する賃貸物件の家賃保証会社を調べて,民間系の家賃保証会社と契約しているかどうかを確認しましょう。民間系の家賃保証会社であれば,信用情報を閲覧することができないため,自己破産している人でも家が借りられる可能性が高くなります。

保証会社がどこか分からない場合は,不動産会社に自己破産したことを話して,借りやすそうな物件を探してもらうことも1つの方法です。不動産会社は過去の経験から,審査の厳しい物件や借りやすい物件を知っている可能性があります。基本的には,親切に対応してくれるはずなので,相談してみると良いでしょう。

自己破産後の仕事

自己破産手続中は,警備員や弁護士などの士業,保険の外交員などの一定の仕事に就くことができませんが,復権後(免責許可決定の確定後)はこれらの職業にも制限なく就くことができます。

例えば,自己破産をした後に猛勉強をして弁護士や税理士になることも可能です。

自己破産をしても,基本的には勤務先に自己破産したことを知られることはまずありません。これまで通り仕事を続けることが出来ます。

ただし,以下の場合は,勤め先に自己破産をしたことが分かってしまうことがあります。

  1. 勤め先から借金をしていた場合(勤め先も手続きに参加することになります)
  2. 金融業,不動産会社など,官報をチェックする業種
  3. 裁判所へ提出する書類で勤務先から発行してもらう必要があるものについて,勤務先に依頼をする場合

就職や転職の際も,自己破産したことを会社に告げる義務はありませんので,上記の場合を除いて,支障なく就職活動を行うことが出来ます。
 3については,たとえば,退職金の金額を証明する書類などが該当しますが,就業規則・退職金規程など,ご自身で確認可能なものであれば,勤務先に話をする必要はありませんので,ケースバイケースとなります。

自己破産によって家族に影響はあるのか?

自己破産をしても基本的に家族に影響はありません。自己破産をして処分されるのは本人の財産のみなので,自分名義の財産を家族名義にしているなど特殊な事情がない限り,家族の財産に影響はありません。また,家族の信用情報に悪影響が及ぶこともありません。子供の進学や就職や結婚,配偶者や親の仕事などにも影響はありません。

ただし,以下の場合は,家族にも影響が及びます。

・破産した人名義の持ち家に住んでいた場合

不動産は高価な財産なので,自由財産とはならず,自己破産の際は原則手放すことになります。破産者本人が所有する持ち家に家族と住んでいた場合は,引っ越さなくてはなりません。しかし,持ち家が配偶者の単独名義であるケースでは,破産者の財産ではないので,影響はありません。

・親や配偶者,子供が借金の保証人となっていた場合

家族に自分の借金の保証人になってもらっていた場合,本人が自己破産をすると,債権者は保証人である家族に残りの借金を一括で支払うよう請求します。家族が支払えない場合は,家族も自己破産をするか,任意整理や個人再生などの債務整理を検討しなくてはなりません。

・配偶者や子供がクレジットカードを持つ場合

基本的に個人の信用情報はその人のお金の貸し借りにのみ影響しますが,例外的に,主婦や学生の子供がクレジットカードを持つ場合に,世帯主の信用情報についても審査されることがあるので,家族がクレジットカードを利用できないというケースがあり得ます。
 また,裁判所に対して生活状況を示すために家計表を提出しますが,生計を同一にしている家族のクレジットカードの支払いがある場合,それも含めて家計表を作成しなければなりません。家族の分であっても明細や債務の詳細を裁判所に伝える場合もあります。
 ご自身の債務が自己破産で返済義務がなくなったとしても,家族の借入が増えてしまうということであれば,根本的な解決にはなりませんので,注意が必要です。