自己破産の陳述書と反省文の書き方

自己破産の陳述書と反省文の書き方

自己破産する際に必要な陳述書について,書く内容と書き方のコツを解説します。また,陳述書と反省文の違いや,反省文が必要なケースと書き方についてまとめました。陳述書に書く内容があいまいな場合や,うまく書けない場合のヒントも掲載しています。

自己破産における陳述書とは?

自己破産手続において陳述書とは,借金などの債務の原因や職歴,家計の状況,自己破産の申し立てをするに至った経緯などを書いた書面で,自己破産をする際には必ず提出する必要があります。

自己破産は免責が認められると借金の返済義務が免除される強力な手続きで,逆にいえば債権者にとっては貸したお金が返ってこなくなります。強力な効果があるからこそ,債務者には「なぜ,自己破産をするに至ったか」を文章で詳細に説明する義務があるのです。

自己破産を弁護士に依頼した場合でも,原則としてまず陳述書は自分で書きます。とはいえ,弁護士からアドバイスや書く際のコツを聞くことができるので,自分だけで作成するよりもスムーズに書くことができるでしょう。

ここでは,裁判所に提出する陳述書を自分で書く場合のコツについてご紹介します。

陳述書には何を書くのか

陳述書には,おおむね以下のような内容を記します。

【陳述書に記入する内容】

  1. 現在の収入について
  2. 職歴や各時期の収入状況
  3. 生活状況
  4. 現在の住まいの状況
  5. 破産申し立てに至った事情
  6. 免責不許可事由の有無

陳述書の書式は各裁判所によって異なりますが,大体はこのような内容となっています。

基本的には裁判所があらかじめ記入欄を作ってくれているので,答案やアンケートのように空欄を埋めていくことになります。ただし,「破産申し立てに至った事情」については,具体的な内容について文章で作成する必要があります。

※免責不許可事由とは

主にギャンブル・投資・浪費などが原因で借金を作ってしまった場合には,「免責不許可事由」に当てはまります。免責不許可事由とは,破産法252条に定められている免責が不許可になるケースのことです。

免責は借金の返済義務がなくなるという重要な制度で,免責が許可されなければ,実質的には自己破産をする意味がなくなってしまいます。

とはいえ,免責不許可事由に当てはまるケースでも,陳述書や反省文に正直に,丁寧に経緯を記したうえで,反省や同じことを繰り返さない気構え,改善点を示すことで,多くのケースでは裁判官の裁量により免責が認められています。(管財事件となり,管財人の調査が行われることが多いです。)

免責不許可事由には,ギャンブルや浪費の他に,以下のような事由があります。

  • 財産隠しや財産の破棄,譲渡
  • 著しく不利益な条件での借金や,信用取引で商品を購入後著しく不利益な条件で処分したこと
  • 一部の債権者にのみ債務を弁済したこと(偏頗弁済)
  • 他人の名前を使う,収入などを偽って借金をしたこと
  • 前回の自己破産から7年経っていないこと

裁判所に対して嘘をついたり,不誠実な言動をとったりした場合も,悪質なケースでは免責不許可事由となります。陳述書には嘘を書かないよう気を付けましょう。

陳述書と反省文の違いとは

陳述書と反省文の違いは,(1)陳述書は自己破産する人全員が書くが,反省文は一部の人のみが書く,(2)反省文は自筆で書く,という点があります。

反省文では,自己破産に至った過程や債権者に対する気持ち,二度と同じことを繰り返さない決意などを記入します。

(1)陳述書は全員提出,反省文は一部の人のみが書く

陳述書は自己破産手続をするすべての人が書かなくてはなりませんが,反省文は免責不許可事由がある場合にのみ,裁判所や破産管財人から提出を求められるケースがほとんどです。

反省文は,主に借金の原因がギャンブルや浪費などのケースで,自己破産して免責を認めたとしても,また同じような理由で借金を繰り返してしまいそうな場合に求められることがあります。

反省文は必要に応じて提出する文章のため,ギャンブルや浪費等が原因の自己破産のケースでも,必ずしもすべての場合で提出するわけではありません。また,ギャンブルや浪費が原因の借金以外の免責不許可事由のケースでも求められる場合があります。

(2)反省文は自筆で書く

通常,陳述書はパソコンで作成が可能ですが,反省文は手書きで記載をすることがほとんどです。なぜなら,パソコンであれば事情をよく知る他人でも作れますが,自書の場合は本人でなければ書けないからです。反省の気持ちを示すためには,本人が自分自身の気持ちを率直に直接書いたということが重要視されます。

反省文が必要なケースはあるのか

免責不許可事由に該当する場合などは反省文の提出が求められる場合が多いです。裁判所や管財人から,具体的にこういった内容について重点的に記載をするよう指示がある場合もあります。
 申立代理人の弁護士がいる場合には,弁護士と相談をしながら,反省文を記載すると良いでしょう。

陳述書を書く際のコツ

陳述書を書く際のコツは,最初に「債権者一覧表」を作成しておくことです。債権者一覧表は,借入先の名前・借入期間・借入金額を記した書類で,こちらも手続きの際に裁判所に提出しなければなりません。

陳述書に文章を書く際は,債権者一覧表に書かれた借入先をすべて登場させなければならず,また,債権者一覧表と陳述書の内容に矛盾があってはいけません。そのため,最初に債権者一覧表を作り,借金について記憶を掘り起こしたり,詳細を調べたりすると,後で陳述書を書く際に楽になります。

借金について,昔の借金であれば正確に覚えておらず,契約書やレシートが残っていない場合も多いと思います。その場合でも,以下の方法で正確な借金の金額を調べることができます。

(1)借金をした業者に問い合わせる

貸金業者や金融機関は,顧客から求められた場合,その顧客との過去の取引履歴を開示する義務があります。

(2)信用情報機関に問い合わせる

信用情報機関とは,個人のお金の貸し借りの履歴を一定期間記録する組織で,日本に3つあります。金融機関や貸金業者,カード会社などは,この3つのいずれかに登録して,個人のお金の貸し借りの記録を登録したり,融資の際に申込者の履歴をチェックしたりしています。

「全国銀行個人信用情報センター(KSC)」
「株式会社シー・アイ・シー(CIC)」
「株式会社日本信用情報機構(JICC)」

この信用情報機関にも開示請求をすることで,記録されている履歴を開示してもらうことができます。情報開示の際には1000円程度の手数料がかかります。

弁護士に依頼した場合は,債権者一覧表の作成もしてもらえますので,その内容を確認しながら,記憶を喚起するとよいでしょう。

具体的に陳述書に盛り込む内容

1 現在の収入について

現在の収入に関しては,大きく,(1)公的扶助の受給の有無(生活保護や年金等を受け取っているか),(2)給与等の有無の二つがあります。

2 職歴や各時期の収入状況

一般的には過去10年の職歴を記入しますが,10年というのはあくまで目安であり,借金から自己破産をするに至るまでの経緯に関わる場合は,10年以上前の経歴も記載します。転職が少なく,簡潔に記入できる場合は,全ての職歴を記入した方が良いでしょう。
また,借入の状況と合わせて,各時期の収入・生活状況も詳細に記載すると良いでしょう。

3 生活状況

同居の家族だけではなく,家計収支に関係する場合には別居している家族についても記載します。また,自身の生活状況についても記載します。

4 現在の住まいの状況

持ち家か,借家住まいなのかなど,住宅の状況について記入します。本人名義の持ち家の場合,自己破産をすると財産として残せない場合がほとんどです。また,他人名義の家や賃貸住まいの場合でも,家賃が発生していれば本人の経済状況に関係するため,重要な情報です。

5 破産申し立てに至った事情

いつ,どこから,何のために,いくら借金をして,それが返済できなくなるに至った経緯について,時系列に沿って自分の言葉で説明します。事情を全く知らない人でも,読めば内容がわかるように,わかりやすい文章になるように心がけましょう。

6 免責不許可事由の有無

ギャンブルや浪費が原因の借金など,免責不許可事由がある場合,正直に書くことがためらわれると思います。しかし,嘘の内容を書いて,それが途中で裁判所に発覚した場合,免責が不許可になる可能性が高まります。嘘をつかずに,具体的に,素直に記載しましょう。
(別途,免責不許可事由の該当性を報告する欄があることがほとんどです。)