サービサーとは 債権回収会社は怖い会社?

サービサーとは 債権回収会社は怖い会社?

サービサーとは何かについて,わかりやすく解説します。

サービサーとは債権回収会社のことで,金融機関等から委託を受けまたは譲り受けて,債権の管理回収を行う法務大臣の許可を得た民間の債権管理回収専門業者を指します。サービサーが取り立てる債権を特定金銭債権と言います。こうした用語の意味や,債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)による暴力団排除の仕組み,サービサーから通知を受け取った場合の対処法についてご紹介します。

サービサーとは

サービサーとは,法務大臣の許可を受けた上で,債権の管理・回収を行う民間の専門業者のことです。「債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)」という法律に基づき,金融機関等から,債権の管理や回収に関して委託を受け,または債権を譲り受けて,金融機関等の代わりに債権を回収します。

サービサーが回収する債権を「特定金銭債権」と言います。特定金銭債権の代表的なものには,金融機関が貸し付けていたお金(貸金)や,クレジットカードの債権(立替金)などがあります。借りたお金や,クレジットカードで使ったお金の支払いをなかなか返せずに滞納していると,お金を借りた金融機関やカード会社からではなく,サービサーから連絡が来て驚くことがあります。

お金を回収する専門業者というと,暴力団とつながっていたり,脅迫的な取り立てをされたりするのではないか,と心配される方もいることでしょう。しかし,実際には,サービサーは健全な会社で,必要以上に怖がらなくても大丈夫です。

法務大臣による許可においては,以下のような規定等があります。

  1. 5億円以上の資本金がある会社であること
  2. 常務に従事する取締役の1名以上に弁護士が含まれること
  3. 暴力団員等の関与がないこと

サービサーは,法律によって債権の取り立てを特別に認められている代わりに,こうしたルールを守って業務を行っています。

サービサーはどういったことをするのか?

サービサーは金融機関やカード会社などに代わって,お金を返済するように債務者に対して請求や取り立てを行います。サービサーの債権回収には,(1)金融機関などから債権の回収を委託されるケースと,(2)サービサー自身が債権を譲り受けるケースがあります。

1)金融機関などから債権の回収を委託されるケース

金融機関等が,支払が滞っている債権の回収を専門業者であるサービサーに委託します。それ以降,借金の返済に関する窓口が金融機関等からサービサーに変更になりますが,債務者は金融機関のままで変わりません。

2)金融機関などから債権を譲り受けるケース

金融機関が債権をサービサーに譲渡するケースです。サービサーが新たな債権者となり,買い取った債権の回収を行い,返済された金銭はサービサーが受け取ります。

サービサーは法的手段で債権を回収する

(1)(2)のどちらにせよ,金融機関やクレジットカード会社などからの支払い請求に応じないでいることで,請求してくる相手がサービサーに代わることがあります。サービサーは役員に弁護士のいる会社ですので,暴力的な取り立てをされる心配はありません。その代わり,法律知識が豊富なので,法的に認められた債権回収手段を行使してきます。

通常は,まず督促の書面が送られてきます。それでも支払わずにいると,支払督促や訴訟など,裁判所を通した手続きにより債権回収に乗り出します。そうして債務名義を取った上で,勤務先からの給与の差し押さえ,不動産や銀行口座の預金などの財産が分かっている場合にはそれらの財産の差押をしてくる場合もあります。

給料を差し押さえられてしまうと,勤め先に借金のことが分かってしまいます。また,毎月の給料のうち4分の1が差し押さえられ,4分の3しか受け取ることができなくなります。お金に困って借金を滞納している人にとっては,非常に大きい打撃になります。

サービサーが回収する債権とはどういったものか?

サービサーが回収する債権は,「特定金銭債権」と呼ばれる種類の債権で,代表的なものには銀行などの金融機関から借りた借金の債権や,クレジットカードの支払いの債権などがあります。

債権とは,「他人に何かをしてもらうことができる法律的な権利」のことで,金銭債権の場合は,「お金を支払ってもらう権利」のことです。債権を持っている人のことを債権者と言います。反対に,お金を支払う義務がある人のことを債務者と言います。

債権は,誰かに譲り渡すことができます。譲り渡すと言っても,実際には債権を売却します。債権を売却すると,今度は債権を買った人が新たな債権者となり,債務者は新たな債権者に対して債務を弁済していくことになります。

サービサーと金融機関の関係

金融機関などは,沢山の顧客を取り扱います。そのうちの一部である,なかなか支払ってくれそうもない債権について,何か月も粘り強く催促したり,法的手段のために様々な手続きを取ったりするのは,手間がかかり大変です。そのため,「不良債権」として,債権の回収をサービサーに委託し,手数料を支払います。また,格安でサービサーに売却してしまうこともあります。

回収困難な不良債権を切り離してしまえるため,金融機関にとってサービサーは不可欠な存在となっています。大手の金融機関は,子会社や関連会社としてサービサーを抱えていることも多いです。

特定金銭債権とは

特定金銭債権とは,サービサーが回収することが許されている金銭債権のことで,「債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)」で規定されています。主なものとしては,以下の金銭債権があります。

  1. 金融機関等が有する貸付債権
  2. リース・クレジット債権
  3. 資産の流動化に関する金銭債権
  4. ファクタリング業者が有する金銭債権
  5. 法的倒産手続中の者が有する金銭債権
  6. 保証契約に基づく債権
  7. その他政令で定める債権

サービサーが,委託されたり,譲り受けたりして債権回収ができる債権は,特定金銭債権に限定されます。一般の消費者に関しては,「①金融機関等が有する貸付債権」,つまり銀行や貸金業者から借りたお金,「②リース・クレジット債権」,カーリースやクレジットカードを利用して発生したお金,この2つの債権に関して,サービサーと関わることが多いでしょう。

サービサー(民間の債権回収会社)ができた背景

「債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)」は,1999年に施行されました。日本では,本来,委託を受けて債権を回収する仕事は弁護士にしか認められていませんでした。民間の業者が債権回収を行えると,暴力団などが絡んで違法な取り立てが行われたり,犯罪組織の資金源になったりするという懸念がもたれていたからです。

しかし,1991年~1993年頃に起こったバブル崩壊と呼ばれる不景気により,大量の不良債権が発生し,金融機関がこれらの不良債権の処理に追われることになりました。このことから,債権回収を,専門知識を持った民間業者に外部委託する必要性が高まりました。サービサー法が制定され,厳格な暴力団排除の仕組みを徹底する代わりに,民間業者も合法的に債権回収を行えるようになりました。

債権の管理・回収に特化した専門集団であるサービサーは,集中的・効率的な不良債権処理を行い,実績をあげました。また,サービサー法による厳しい制限をしっかりと順守する企業ばかりだったため,現在は健全な会社として社会に定着しています。

債権管理回収業に関する特別措置法の仕組みはどういうものか?

サービサーは,暴力団の関与がないように,また,法に反する強引な取り立てがないように,債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)により様々な仕組み(法務大臣の許可に当たっては警察庁長官,弁護士会からの意見聴取がなされるなど)が作られています。

債権を回収する,と言うと,暴力団のようなガラの悪い人たちが,手段を選ばず借金を取り立てに来るという,怖いイメージが一般的にあります。実際,法律で何も規定をしていないと,そのような取り立てが起こる可能性があります。

しかし,借金を返済していないからと言って,人権を無視した暴力的な取り立てが許されていいわけではありません。そのため,あくまで債務者の人権を尊重しながら,適切な債権回収ができるように,サービサーに対しては慎重な法律の仕組みが設定されています。

サービサーを規律するルールの代表的なものとしては,法務大臣の許可要件として「5億円以上の資本金があり,常務取締役の1名以上に弁護士が含まれ,暴力団の関与がないこと」が定められていますが,それ以外にも様々な外部機関が,サービサーの業務が違法なものとならないようチェックを行う仕組みになっています。

法務大臣

サービサーに許可を出すほか,サービサーから事業報告書の提出を受けたり,サービサーに対して立入検査等が行えることとされています。また,法律で定める一定の場合には,サービサーに対し,業務改善命令,業務停止命令又は許可取消処分を出すことができます。その際,暴力団排除の観点から,あらかじめ警察庁長官に意見を聴くことができます。

警察庁長官

暴力団が関与していないかを確認するため,報告を求めたり立入検査等が行えます。その際は,結果を法務大臣に通報するものとされています。また,暴力団排除のために,法務大臣に対し適当な措置を取るように意見を述べることができます。

日本弁護士連合会や各弁護士会

常務取締役となる弁護士が適格であるかどうかについて,法務大臣が日本弁護士連合会の意見を聴取することになっています。適格者として選ばれた弁護士が,取締役としてサービサーの業務の適正さ・健全さをチェックする仕組みが導入されています。

このように,法務大臣・警察庁長官による連携のほか,日弁連や各弁護士会もかかわって,サービサーの業務が健全なものとなるように,厳格に規定されています。

サービサーを騙る架空業者からの詐欺に注意

サービサーは健全な会社ですが,現実の債権回収会社に似た名前を騙って,ありもしない債権を架空請求してくる違法な業者も存在します。こうした違法業者には1円も払う必要はありません。そのため,債権回収会社を名乗る者から見慣れない通知が来た場合は,まず法務省の公式サイトで実在する債権回収会社かどうかを確認しましょう。

「法務省:債権管理回収業の営業を許可した株式会社一覧(http://www.moj.go.jp/housei/servicer/kanbou_housei_chousa15.html)」

「法務省:債権回収会社と類似の名前をかたった業者による架空の債権の請求に御注意ください(http://www.moj.go.jp/housei/servicer/kanbou_housei_chousa19.html)」

また,最近では,電話で,債権回収業者を名乗る者から,身に覚えのない契約について未納料金や損害金が発生しているとして,金銭を請求される事例もあるようです。電話の場合は考える時間がなく,戸惑ってしまうと思いますが,身に覚えのない請求についてはその場で回答をするのではなく,しっかり事実を確認し,自身が無関係であれば無視をしましょう。

「独立行政法人国民生活センター:新手の架空請求手口にご注意! 債権回収業者から「過去の契約の未納料金・損害金の和解」を求める電話!?(http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20200130_2.pdf)」

サービサーから通知が来たらどうすればいい?

サービサーからの通知を受けとったら,まずは実在のサービサーか,身に覚えのある請求かどうかを確認した上で,お金を支払えない場合は債務整理を取り扱っている弁護士に相談することをお勧めします。

サービサーは豊富な法律知識を持ったプロ集団ですので,躊躇なく法的手段に訴えてくる一方,弁護士を立てて交渉すれば,和解交渉に応じてくれるケースが多いです。

また,サービサーに債権が渡るということは,借金を何度も滞納したということであり,信用情報はブラックの状況になっていると考えられます。その場合には,既に新たな借り入れやクレジットカードの使用ができない状況であることが多いため,債務整理のデメリットの1つであるブラックリスト入りは,新たなデメリットとは言えないでしょう。

そのため,法律の専門家に間に入ってもらって,借金問題の解決に当たることをお勧めします。