自己破産するとパソコンは処分されるのか?
自己破産時にパソコンなどの財産が処分される可能性について概説します。パソコンやタブレット,スマホなどの家電は,原則として手元に残せます。ただし,20万円以上の価値があるものや,ローン返済中のものは失う可能性があります。自己破産後もパソコンを手元に残す方法や,財産を処分されない債務整理についてまとめました。
目次
自己破産時にパソコンはどういう扱いをされるのか
自己破産をしても,原則としてパソコンは手元に残り,そのまま使い続けることができます。ご家庭用や,一般的な仕事で使用する普通のパソコンであればまず処分されません。例外的に,高性能なパソコンや,ローン返済中のパソコンは失う可能性があります。
自己破産をすると,一定額以上の財産は裁判所によって処分され,債権者に配当されます。そのため,「生活に必要な品物も処分されるのでは…」と心配になるでしょう。
しかし,生活に必要な家財道具や家電などは,処分の対象外になります。
自己破産は,借金に困っている人の生活を立て直すための制度です。生活に直接必要な道具を自己破産で奪われたら生活再建が不可能になるので,処分される財産は一定の金額以上で売却できるものに限られます。
一定の金額とは,基本的には「20万円以上」が基準とされています。売却価格が20万円以上するパソコンであれば,処分対象になります。一般的な中古パソコンであれば,売却価額が20万円を超えることはないので,手元に残せます。
他の家財道具も,「中古品として売って20万円以上するか」が一つの基準となるので,ほとんどの品物は対象外となります。
タブレットやスマートフォン,家庭用ゲーム機なども,中古品として20万円以上の価値があるものを除き,基本的には手元に残せます。
自己破産時にパソコンが没収されるのはどういうケースか
パソコンは自己破産をしても手元に残せますが,例外的に以下の場合は手放す可能性があります。
(1)パソコンが高価な場合
(2)パソコンを複数台所有している場合
(3)ローン返済中のパソコンの場合
(4)クレジットカードでパソコンを買った場合
(1)(2)の場合は,裁判所から選任された破産管財人へ物品を渡し,破産管財人が売却手続きをしますが,(3)(4)の場合は,弁護士介入後にローン会社やカード会社が所有権に基づいてパソコンを引きあげるという違いがあります。
(1)パソコンが高価な場合
パソコンが高価品で,中古品として売却して20万円以上する場合は,財産的価値が高いと認められて処分対象になる可能性があります。
特殊なパソコンや,高級なゲーミングPCなどは中古品としても価値が認められ,手放すことになる可能性があります。
もっとも,パソコンの評価額が20万円を超える場合でも,それ以外の財産との合計額が99万円以下,かつ,生活に必要なものと認められれば,「自由財産の拡張」が認められて手元に残すことが可能です。
パソコンの評価額が20万円未満かつ生活に必要な状況であれば,処分対象にならないので,気にせずに使い続けることができます。
(2)パソコンを複数台所有している場合
パソコンを複数台所持しており,かつ,その中に財産価値の高いパソコンがある場合,裁判所による処分の対象になることがあります。
例えば,仕事用に普通のパソコンを1台,ゲーミングPCとして高性能のパソコンを1台持っていて,ゲーミングPCのほうが売却価格20万円を超える場合,ゲーミングPCが処分される可能性があります。
(裁判所によっては,対象物の合計で20万円を超えるかどうか判断する場合もありますので,その場合には,2台とも処分対象になる可能性があります。)
(3)ローン返済中のパソコンの場合
パソコンをローンで購入しており,まだ返済途中の場合,契約書の内容によっては,ローン会社にパソコンを引き上げられてしまう可能性があります。
ローン返済中のパソコンには「所有権留保特約」がついている場合があります。所有権留保特約が契約書に記載されている場合,ローンの返済をしている間は,パソコンの所有権はローン会社にあります。ローンを完済すると初めて所有権は購入者に移転する仕組みになっています。
所有権留保特約がある場合,自己破産によってローンを支払えなくなると,ローン会社が所有権に基づいてパソコンを引き上げることがあるのです。
もっとも,パソコンなどの一般的な家電は,中古品となると価値も大きく下がるため,ローン会社が債権を放棄し,回収されない可能性もあります。
近年はパソコンの価格が高騰しているため,高性能なパソコンであれば,引き上げるメリットもあるでしょう。パソコンを引き上げられる可能性があるかどうかは,専門家に契約書を確認してもらうことをお勧めします。
(4)クレジットカードでパソコンを買った場合
クレジットカード払いでパソコンを買った場合,代金相当額を支払うまでは,パソコンの所有権はクレジットカード会社に留保されています。そのため,引き上げられる可能性があります。
もっとも,カード会社にとっては,わざわざパソコンを引き上げに来て,中古品として売却するのは手間やコストがかかります。所有権を放棄して回収に来ない場合もあるようです。
ローンでパソコンを買った場合と同様,パソコンを引き上げられる可能性の有無は,専門家に契約書を確認してもらうことをおすすめします。
自己破産後もパソコンを手元に残す方法
パソコンを裁判所に処分される恐れがあっても,以下の方法により,パソコンを手元に残すことができる可能性があります。
・自由財産拡張の申し立てをする
・自己破産以外の債務整理を行う
「自由財産」とは,自己破産をしても手元に残すことができる財産のことです。他方,自己破産をすると裁判所に処分され換価される財産のことを「破産財団」と言います。
本来なら破産財団に組み込まれてしまう財産でも,自由財産拡張を申し立てることで手元に残すことができる可能性があります。裁判所が自由財産の拡張を認めた場合には,20万円を超えるパソコンも手元に残せます。裁判所が自由財産拡張を認めない場合,パソコンの評価額を現金で破産財団に組み入れることで,破産財団からパソコンを放棄してもらうという手続きをすることができる可能性もあります。
自由財産拡張によりパソコンを残せる可能性も
高価なパソコンであっても,仕事や生活に必要な場合,自由財産拡張を裁判所に申し立てることにより,手元に残せる可能性があります。
自由財産の範囲の拡張とは,「本来は自由財産にあたらない財産であっても,破産者の個別の事情に応じて,その生活の保障を図ることを可能にするために,裁判所の決定で,自由財産として取り扱う」制度です。
自由財産の範囲の拡張により,その財産については,破産財団には組み込まれず,破産者が所有することができます。
財産的価値が20万円を超えるパソコンや,複数台のパソコンであっても,仕事や生活に必要だと裁判所が認めれば,そのまま残せます。
もっとも,自由財産拡張が認められるかどうかは個別的な判断になり,自己破産の申し立てをして,手続きが進んでいく中で決まることになりますので,万が一でも財産を処分されるのが嫌な場合には,自己破産以外の債務整理を検討することになります。自己破産は借金をゼロにできる強力な手続きですが,財産が処分されるというデメリットもあります。自己破産以外の債務整理であれば,財産を処分される手続きはありません。
以下,具体的に2つの手段を解説します。
パソコンを確実に残すための債務整理の方法
パソコンを確実に残すためには,自己破産以外の債務整理を行う方法があります。債務整理には,自己破産以外に「任意整理」と「個人再生」があります。
(1)任意整理
裁判所を通さない手続きで,借金の債権者と私的に交渉して,借金の利息カットやリスケジュールなどを和解します。私的な話し合いなので債務者本人でも可能ですが,法律知識が無いと債権者が有利になりがちなので,弁護士に依頼したほうが良いでしょう。
任意整理ならば,債権者を選ぶことができるので,パソコンをローンやクレジットカードで買っている場合でも,ローン会社やカード会社を整理対象から外すことでパソコンを守ることができます。代金を支払い続けている限り,パソコンを引き上げられることはありません。
ただし,任意整理では原則として借金の元本を減額することはできず,借金負担の大幅な軽減は難しいでしょう。「借金の元本のみならば3~5年程度の分割払いで返済が可能」という場合は任意整理で解決可能です。
(2)個人再生
裁判所を通した手続きで,借金総額を5分の1程度(最大10分の1程度)or所有している財産の価値(清算価値)まで,大幅に減額できます。財産を処分する手続きが無いので,手持ちの財産は基本的に手放さずに済みます。
個人再生は,債務整理の中でも特に手続きが煩雑と言われています。法律上は本人だけで手続きができますが,実務上は弁護士への依頼が欠かせない手続きと言えるでしょう。
個人再生の場合,以下の2点に注意が必要です。
①全ての債権者が手続きの対象となること
任意整理とは違い,特定の債権者だけを手続きから外すことはできません。そのため,ローン中のパソコンやクレジットカードで買ったパソコンで,代金を完済していない場合,所有権に基づいて債権者に回収されてしまう可能性があります。
既に代金を支払い終わっている場合は,パソコンをそのまま手元に残せます。
②財産が高額だと借金の減額幅が小さくなること
財産を有していると,その分,個人再生の借金の減額幅が少なくなる可能性があります。
個人再生の際は,所有する財産価値の合計を算出します。これを「清算価値」と言います。「個人再生後,最低限この金額は支払うことになる減額後の借金額」を「最低弁済額」と言いますが,最低弁済額は清算価値を下回ることができません。
これを清算価値保障の原則と言い,債務者が仮に自己破産を選んだ場合,債権者に配当されたであろう金額は,必ず債権者に支払わなければならないというルールです。
高価な財産を持っていると,その財産の価値の分,借金の減額幅が少なくなることには注意してください。
自己破産をするとなぜ財産が処分されるのか
自己破産をすると一定額以上の財産が処分されるのは,債務者が自己破産をすると債権者が損失を受けるため,少しでも債権者の損失を補填するためです。罰金のようなペナルティではありません。
自己破産をすると債務についての返済義務が免除されます。借金が返せなくなっている債務者にとっては非常にありがたい制度ですが,債権者は合法的に貸したお金が返ってこなくなり,損失を受けます。債権者の損失を国が補填することもありません。
そのため,破産者に一定額以上の財産がある場合,裁判所は破産管財人を選任し,財産の管理や売却を進めます。破産管財人は破産手続きのプロで,弁護士がなります。最終的には,破産管財人は財産を売却して得たお金を債権者に配当します。
ペナルティではないので,価値の低い財産や,生活再建に必要な財産に関しては,自由財産として手元に残すことができるのです。
自己破産の際,価値のある財産を申告しないとどうなる?
自己破産の際,弁護士や裁判所に高価な財産の存在を隠したまま手続きを行い,後々それが発覚した場合,「財産隠し」として免責が不許可になる場合や,最悪の場合「詐欺破産罪」として犯罪に問われる場合があるので,正直に申告しましょう。
借金を帳消しにする制度を「免責」と言いますが,この免責が受けられなくなる事情である「免責不許可事由」の一つに「財産隠し」があります。免責が受けられないと,折角自己破産手続きをとっても,借金がそのまま残ってしまいます。
また,詐欺破産罪には,財産を隠したり壊したり,財産を譲ったように見せかけることや,財産の価値を下げる行為などが該当します。詐欺破産罪に問われると,10年以下の懲役刑もしくは1,000万円以下の罰金,あるいはその両方が課せられることもあります。
「財産が処分されるのが嫌だから」と財産を隠してもいいことはありません。正直に打ち明け,財産を残せる方法がないかを検討したほうが良いでしょう。
自己破産で財産を残したい場合は弁護士に相談を
自己破産をしても,特に高価なパソコンでない限り,原則として手元に残すことができます。しかし,財産の処分に関して不安な点があれば事前に弁護士に相談されることをおすすめします。
自己破産以外にも,任意整理や個人再生と言った債務整理があります。「自己破産しかない」と思い込んでいても,実際に専門家に相談した結果,他の債務整理が最適と判明するケースもあります。
自己破産は債務の返済義務がなくなる強力な手続きですが,その分,財産の処分というデメリットを伴います。手放したくない財産がある場合は,弁護士と債務整理の手段を慎重に検討されることをおすすめします。
東京弁護士会 登録番号 53737
困っている人を助けたい、という想いから弁護士を志しました。
女性でも相談しやすい環境をご用意していますので、お気軽にご相談ください。
【経歴】
明治大学法学部卒
明治大学法科大学院修了
東京弁護士会所属(司法修習68期)


