過払い金とは 過払い金が発生する仕組みと請求可能なケースについて

過払い金とは 過払い金が発生する仕組みと請求可能なケースについて

過払い金がなぜ発生するのか,過払い金の仕組みと過払い発生の可能性が高い取引・低い取引についてまとめました。過払い金は2010年6月以前に貸金業者等からグレーゾーン金利で借金して返済した場合に発生します。もっとも,全ての人が過払い金を請求できるわけではなく,請求できないケースもあります。また,借金の正確な日付や内容が不明でも,過払い金を請求できる場合がありますが,その仕組みについても紹介します。

過払い金が発生する仕組みとグレーゾーン金利

過払い金とは,過去に借金をした人が,法律の上限金利よりも利息を多く支払いすぎていた場合に,業者に請求して返してもらえる権利のあるお金です。

業者は,本来取ってはいけない高金利でお金を貸し付けることが事実上許されていた時期がありました。この「利息制限法を超える違法な高金利」のことをグレーゾーン金利と呼んでいます。

なぜ,違法な高金利なのに,貸金業者が堂々と貸し付けることが認められていたのでしょうか?

それは,借金の利息の上限金利を定めた法律には,「利息制限法」と「出資法」の二つがあり,かつては,二つの法律は別々の利率で上限金利を設けていたからです。

  • 利息制限法の上限金利…借りた金額によって年15%~20%
  • 出資法の上限金利…借りた金額にかかわらず年29.2%

このうち,利息制限法には罰則がなかったのですが,出資法には罰則がありました。
そのため,「利息制限法の上限を超える違法な高金利だが,出資法の範囲内の金利」を設定しても,業者が罰せられることがなかったのです。

また,旧貸金業規制法に存在した「みなし弁済」という制度は,グレーゾーン金利であっても貸金業者が一定の条件を満たすことで利息の受け取りを有効としていました。

グレーゾーン金利について,より詳しく知りたい方は,下記のコラムも参照してください。
「グレーゾーン金利とは(https://hibari-law.net/column/?p=250)」

グレーゾーン金利の社会問題化と法改正

2006年1月より前までは,利息の上限金利に関する二重の法規制やみなし弁済制度により,消費者金融の融資やクレジットカード会社のキャッキングなどは,20~29%程度のグレーゾーン金利を設定してお金を貸していました。しかし,高額な利息を返しきれなくなる人が続出し,社会問題化しました。

2006年1月13日に最高裁判所でみなし弁済を事実上認めない判決が出たことにより,世の中が大きく動き出し,消費者金融は金利を合法的な範囲に引き下げるようになり,法律の改正も行われることになりました。グレーゾーン金利は,2010年6月に法律が改正されて,現在はなくなりました。

しかし,それ以前に借りた借金の場合,過払い金が発生している可能性があります。

過払い金発生の可能性が高い取引

過払い金は,過去に借金をしていたすべての人に発生するわけではなく,違法な利息を支払っていた一部の人にだけ発生します。過払い金発生の可能性が高いのは,以下の3つすべてに当てはまる取引です。

  1. 2010年6月18日までに借り入れた借金であること
  2. 消費者金融から借りたお金か,クレジットカード会社のキャッシングを利用したこと
  3. 業者との最後の取引の日から10年経過していないこと

1.2010年6月18日までに借り入れた借金であること

2010年6月18日の法改正によりグレーゾーン金利は消滅し,以降,合法的な貸金業者はグレーゾーン金利でお金を貸しつけていません。したがって,過払い金が発生しているのは2010年6月17日以前の取引になります。

また,2006年1月のみなし弁済を事実上認めないとする最高裁判決が出て以来,2007年頃に,多くの消費者金融やクレジットカード会社は貸付金利をグレーゾーン金利から合法な範囲内にまで引き下げています。

例えば,消費者金融大手のアコムは2007年6月17日まで,高金利でお金を貸しつけていましたが,2007年6月18日から金利を適法な範囲内に引き下げています。同様に,アイフルは2007年8月,レイクやプロミスは2007年12月に金利を引き下げています。

信販会社やクレジットカード会社は,例えばイオンクレジットが2007年3月10日まで,セゾンカードが2007年7月13日までといった具合で,同様に多くの会社が2007年頃には金利を引き下げいています。

したがって,ご自身に過払い金が発生しているかどうかは,まず「借りていた消費者金融(カード会社)の名前 過払い金請求」などで検索をして,過払い金が請求できる時期にお金を借りていたか確認されるといいでしょう。

ただし,同じ会社から継続して借金やキャッシングを繰り返していたケースなどでは,2007年以降の取引でも過払い金を請求できる可能性がありますので,調査が必要なケースもあります。

2.消費者金融から借りたお金か,クレジットカード会社のキャッシングを利用したこと

グレーゾーン金利でお金を貸しつけていたのは,主に消費者金融とクレジットカード会社です。銀行や信用金庫から借りたお金,奨学金,カーローンや住宅ローンなどは,以前から適法な範囲内でお金を貸しつけていたので,過払い金は発生していません。

また,消費者金融であっても,会社によっては適法な金利の範囲内でお金を貸しつけていた企業もありますので,そうした企業には過払い金は発生しません。詳しくは次章の「過払い金発生の可能性が低い取引」で紹介します。

消費者金融からの借金に関しては覚えている人も多いでしょうが,案外盲点となっているのは,クレジットカード会社のキャッシングです。クレジットカードを利用していても,ショッピング枠の利用だけであれば,過払い金は発生しません。しかし,キャッシングでお金を引き出していた場合は,過払い金が発生している可能性があります。

キャッシング枠を設定しておくと,海外に滞在しているときに,ATMやキャッシュディスペンサーなどで現地通貨を引き出すことができます。利息やATM利用手数料がかかるものの,銀行や両替所で両替をしなくても済むため,仕事で海外に出張する人や海外旅行が好きな人が好んで利用していました。

クレジットカードのキャッシング枠を設定しており,2007年までに海外での利用も含めてクレジットカードをよく利用していたという人は,一度過払い金がないか確認されることをおすすめします。

10年以上前からずっと同じクレジットカードを使い続けている場合,過払い金が請求できる可能性が高まります。

3.業者との最後の取引の日から10年経過していないこと

1.2.の条件を満たしていても,過払い金が発生している業者に最後に借金の返済をしてから10年以上経過している場合は,時効により過払い金を請求することができません。

時効とは,この場合は,金銭を請求する権利を有していても,一定の期間それを行使しなければ,請求する権利が消滅するという民法の規定です。

過払い金の消滅時効は,当該業者に最後に返済した日から10年となっています。そのため,最後の取引から10年以上何もしていなかった場合は,その後過払い金を請求しても,相手の業者に時効を援用され,過払い金を受け取ることができません。

一時期,テレビなどで過払い金に関する広告が多く流れていましたが,最近はだいぶ落ち着いてきました。それは,グレーゾーン金利が発生する状況がなくなってから10年以上が立ち,1.や3.の条件を満たす人が減ってきたからだと考えられます。

 ※民法改正により,2020年3月31日以降に完済をしたものについては,過払い金を請求できる権利があると知ってから5年が経過すると,完済から10年が経過していなくても時効が成立します。

過払い金発生の可能性が低い取引

2010年6月以前に消費者金融などから借りた借金であっても,過払い金発生の可能性が低い取引についてご紹介します。代表的には,以下の3つになります。

  1. 2008年~2010年6月17日までに借り入れた借金であること
  2. 適法金利で貸し付けていた一部の貸金業者からの借金であること
  3. 貸金業者が倒産していること

1.2008年~2010年6月17日までに借り入れた借金

多くの消費者金融やクレジットカード会社は,2007年ごろまでに利息の金利を適法な範囲に引き下げていますので,2008年以降にした借金については,過払い金が発生していない可能性が高くなります。

2008年というと,リーマンショックがあった年です。したがって,ご自身の記憶の中で,借金をしたのがリーマンショックの後だった場合は,過払い金が発生しない金利で借金をして返済した可能性が高いでしょう。

もっとも,全ての業者が2007年の年末までに金利を引き下げたわけではありません。また,2007年以前から継続して借金と返済を繰り返していた場合は,過払い金を請求できる可能性があります。

そのため,2008年~2010年6月17日までに借り入れた借金であっても,心当たりがあれば,一度過払い金の有無を調査されることをおすすめします。特に,その後長期間にわたって返済していた場合,多額の過払い金が発生している可能性があります。

2.適法金利で貸し付けていた一部の貸金業者からの借金

2007年以前も消費者金融のすべてがグレーゾーン金利でお金を貸しつけていたわけではなく,アットローン(現在はSMBCコンシューマーファイナンスに吸収されました),モビット(SMBCモビット),ダイレクトワン,キャッシュワンと言った消費者金融は,利息制限法に違反しない適法な金利でお金を貸しつけていました。

したがって,これらの業者からの借金の場合,2007年以前の借金でも過払い金が発生していないと考えられます。

  • 利息や手数料が発生するショッピングのリボ払い
  • 高額商品やエステ,脱毛などのサービスについて,5年払いと言った長期契約でショッピングクレジットや分割払い契約を組んでいた場合

上記のような借金でも,商品・サービスの価格に加え多くの利息や手数料を支払った記憶があると思いますが,キャッシング枠を利用していない限り,過払い金は発生していません。

3.貸金業者が倒産している

過払い金が発生していても,貸金業者がすでに倒産している場合は,過払い金返還請求はできません。

倒産した有名な消費者金融としては,武富士が2010年9月に会社更生法の適用を受け事実上の倒産,SFコーポレーション(旧三和ファイナンス)も2009年8月(★2011年8月ではなく??)に破産手続開始決定を受けて倒産しています。

そもそもなぜ過払い金の発生有無が分かるのか

「2000年代に借金をしていたが,具体的にいつ借りたか記憶がない」「そもそも借りた業者の名前も覚えていない」というケースでも,調査して正確な過払い金額を導き出し,過払い金を請求できます。方法は以下の通りです。

  1. 業者が分かっている場合は,業者に取引履歴を請求する
  2. 信用情報機関に情報開示を請求する

1.業者が分かっている場合は,業者に取引履歴を請求する

取引相手の業者が分かっており,借金額や借りた日,返済した日などが不明な場合は,貸金業者に取引履歴の開示を請求することで正確な過払い金の額を算出することができます。取引履歴は個人でも電話などで請求できますが,弁護士等の専門家に依頼するとスムーズに取り寄せることができます。

2.信用情報機関に情報開示を請求する

取引相手の業者の名前を憶えていなくても,信用情報機関に残っている情報から業者名を割り出し,過払い金を請求できる可能性があります。

信用情報機関とは,個人のお金の情報の貸し借りを記録する機関で,日本に3つあります。貸金業者や銀行などの金融機関,クレジットカード会社や信販会社は,3つの機関のいずれかに加盟しており,お金を貸す際に「この人はお金を貸しても返してくれそうか」を信用情報機関に登録された情報から審査します。

【日本にある3つの信用情報機関】
  • 株式会社日本信用情報機構(JICC)
  • 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
  • 全国銀行個人信用情報センター(KSC)

これらの信用情報機関はいずれも,1,000円程の手数料で自身の取引履歴の情報を開示してもらうことができます。

1.2.の情報をもとに,過払い金の発生の有無を確認し,過払い金がある場合は正確な金額を計算して,業者に請求することができます。ただし,時効期間が経過していたり,貸金業者が倒産していたりする場合は,過払い金は請求できません。

まとめ

過払い金は,本来支払わなくてもよかったはずのお金なので,それを取り戻すことは消費者の権利です。特に,高額の借金をしたケースや,何年もかけて返済したケースでは,過払い金の金額も大きくなります。
また,争点があるような取引だと,自身で交渉をしても過払金の返還が受けることが難しい場合もあります。
弁護士や司法書士の事務所では,過払い金の相談自体は無料で受け付けているケースが多くあります。心当たりがある方は,一度専門家に相談されることをおすすめします。